アニメ推しの子第3期のエンディングで、初めてなとりの声に触れた人は多いはずだ。透き通った声で、でも確かな重さを持って語りかけてくる。なとりというアーティストを調べてみると、武道館2公演を即完売し、代表曲Overdoseは4億回超え再生を記録しているという。TikTokで火がついたと書いてある。でも、それだけじゃない。
TikTokで爆発したOverdoseが証明した「2分で終わらない」構造
なとりが注目を集めたきっかけはOverdoseだ。TikTokで急速に広まり最終的に4億回超えの再生を記録した。しかしバズった曲を作ったアーティストと括るのは少し乱暴かもしれない。サビの一節が切り取りやすく感情移入しやすいテーマを持っている。Overdoseはその条件を満たしながら2分聴き流して終わりにならない構成を持っていた。Aメロから漂う倦怠感と、サビで解放されるカタルシス。歌詞の主人公は好きな人への依存を過剰摂取と表現する。甘くて苦い比喩が今の20代の恋愛観とぴたりと重なった。
シンガーソングライターとしての独自ポジション
なとりは楽曲制作も自身で行うシンガーソングライターだ。ボカロ文化の影響を受けつつも声そのものの質感で聴かせるアコースティックな方向性が特徴的で独特のポジションに立っている。歌詞には日常の断片が多く登場する。通勤電車、深夜のスマートフォン、誰かに送れなかったメッセージ。壮大なメッセージではなく小さくて鋭い痛みの描写が刺さる。
武道館2公演即完売が示す「音源から会場へ」の熱量
なとりは日本武道館での2公演を即完売した。武道館のキャパシティは約1万4000人。2公演合計で約2万8000人が足を運んだ計算になる。音源で好きになった人が実際に会いに来るという流れが確立されている。楽曲の力がリアルな熱量に変換されている証明だ。
推しの子EDセレナーデが広げた新しいリスナー層
推しの子第3期エンディングテーマにセレナーデが起用されたことで、なとりを知る層が一気に広がった。より透明感を前面に出した仕上がりで、アニメのテーマと自身の音楽性を融合させつつなとりらしさを失わないバランス感覚は確かな成熟を示している。Sony Music所属となり2ndアルバムをリリースしたことは、なとりの新章を告げる出来事だった。
まだOverdoseしか知らないあなたへ
まだOverdoseしか知らないなら今こそ聴き直す好機だ。セレナーデから入った人はぜひプロポーズや深海も試してほしい。声と言葉が混ざり合う場所に、きっと自分だけの刺さり方がある。


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