曲が始まった瞬間、体が動く。ATEEZの新曲「Adrenaline」はそういう曲だ。2026年2月にリリースされたミニアルバム『GOLDEN HOUR : Part.4』の表題曲として発表され、リリース直後から日本のストリーミングチャートでトップを記録した。K-POPのビルボード・ジャパンやSpotifyデイリーランキングでトップに食い込むグループは決して多くない。そのなかでATEEZが今、最も勢いを持つグループのひとつであることは間違いない。
Adrenalineとは何か——サウンドの設計を読み解く
「Adrenaline」の最大の特徴は、ジャンルを横断するサウンドデザインだ。ロックのギターリフを軸に、EDMのベースライン、ハードコアに近いドラムのアタック感が混在する。K-POPの定番であるスムーズなメロディーラインとは一線を画し、楽曲全体が物理的な衝撃として体に届く構造になっている。
サビに差し掛かるたびに体感温度が上がるような設計は、ライブでの爆発力を最初から意識して作られている。MVはリリース直後から国内SNSで爆発的に拡散され、TikTokのダンスチャレンジ再生数は公開1週間で1000万回を突破したとみられる。20代女性を中心に新規ファンを急速に取り込みながら、既存のATINY(ATEEZファンの呼称)からも「これがATEEZの集大成」と絶賛された。
パフォーマンス面でも圧倒的だ。8人のメンバーが高速のフォーメーション変換を繰り返しながら、それぞれのソロパートで個性を全開にする。リーダー・ソンファの地に足のついた存在感、ホンジュンのしなやかで空間を支配するダンス、ウヨンの精密なアクロバット——8人全員が楽曲のエネルギーをそのまま体に宿しているように見える。
GOLDEN HOURシリーズが辿り着いた頂点
ATEEZがGOLDEN HOURというシリーズ名を冠したアルバムを初めてリリースしたのは2024年のことだ。「ゴールデンアワー」とは夕暮れ直前の、最も美しい光が差し込む時間帯を指す写真・映像用語。ATEEZはこの言葉をグループとしての全盛期に重ね合わせ、4部作のコンセプトアルバムとして設計してきた。
Part.1からPart.3まで積み上げてきたコンセプトの最終章がPart.4であり、その表題曲がAdrenalineだ。シリーズを通して聴くと、音楽的にも物語的にも「積み上げてきたものの爆発」として機能しているのがわかる。ファンの間では「GOLDEN HOURシリーズ全部聴いてから Adrenaline を聴くと泣ける」という声が多数上がっており、4部作全体で一つの作品として体験することが推奨されている。
ちなみにGOLDEN HOUR : Part.1はビルボードワールドアルバムチャートで1位を獲得。シリーズが進むにつれてチャート成績と話題性が右肩上がりを続けてきた経緯があり、Part.4でのAdrenaline日本ストリーミングトップはその流れの必然だともいえる。
デビュー8年——ATEEZが「信頼できるグループ」になるまで
ATEEZが韓国・KQエンターテインメントからデビューしたのは2018年10月。デビュー翌年の2019年には、まだほとんど知名度がない状態でヨーロッパツアーを敢行した。ファンベースが薄い土地でゼロから観客を獲得しにいく姿勢は、当時から彼らの特異性を示していた。
2020年にはビルボードのソーシャル50チャートで1位を獲得。2022年のアルバム『THE WORLD EP.1 : MOVEMENT』はビルボード200で3位に入り、韓国アーティストとして当時5番目の記録となった。2023年の『THE WORLD EP.FIN : WILL』ではアルバム発売週のビルボード200で2位を記録し、グローバルでの影響力を着実に積み上げてきた。
ファンが「ATEEZは裏切らない」と口をそろえる理由は、この実績にある。リリースのたびに確かな進化を見せ、ライブのたびにスケールを更新してきた8年間の蓄積が、Adrenalineという一曲に凝縮されている。
ワールドツアー「IN YOUR FANTASY」——日本公演も争奪戦
2026年初頭からスタートしたワールドツアー「IN YOUR FANTASY」は、アジア・北米・ヨーロッパを含む大規模なツアーだ。北米公演では複数都市でスタジアム・アリーナクラスの会場を使用しており、各公演でほぼ即時ソールドアウトという状況が続いている。
日本公演もすでにスケジュールが発表されており、チケット争奪戦は熾烈だ。ファンクラブ先行・一般販売ともに瞬時に完売するケースが多く、「定価で取れたら奇跡」という声もSNS上で多数見られる。ツアー開催期間中にアルバムをリリースするという体力的にも制作的にもタフな選択を実行できるのは、グループとしての成熟度と事務所KQエンターテインメントの制作体制があってこそだ。
ライブを見たことがない人にとって、今ツアーは「ATEEZとは何者か」を最も密度高く体験できる機会になる。Adrenalineをはじめ、GOLDEN HOURシリーズの楽曲がセットリストに並ぶことは確実で、映像とパフォーマンスの完成度は過去ツアーを上回ることが期待されている。
ATEEZを知らない人が最初にすべきこと
まだATEEZを一度もちゃんと聴いたことがないなら、入口は「Adrenaline」のMVで十分だ。予備知識は一切不要で、まず4分間だけ再生してほしい。再生が終わった後に「もう一回見たい」か「次の曲を探したい」と思っていたら、それがATINYになる最初の一歩だ。
その後の順番としては、GOLDEN HOUR Part.1から順に聴き進めるのが最もおすすめのルートだ。シリーズを通して聴くことで、Part.4・AdrenalineがどれほどのカタルシスとしてATEEZが設計してきたかが体感できる。4部作を一気に聴いた後で、もう一度Adrenalineに戻ってほしい。体の反応がまるで違うはずだ。
K-POPシーン全体を見渡しても、デビューから8年でこれほど一貫した上昇曲線を描いてきたグループはそう多くない。ATEEZの全盛期を、いまリアルタイムで目撃できていることは——K-POPファンとして確かな幸運だと思う。


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