Vaundyはなぜアニソンを”量産”できるのか?26歳の全セルフプロデュースが音楽業界に突きつけること

コンサートで演奏するミュージシャン - Vaundyのアニソン活動を紹介する記事のアイキャッチ 音楽
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2026年4月、アニメ「黄泉のツガイ」が放送を開始した。荒川弘が原作を手がけるファンタジー大作に、オープニングテーマ「飛ぶ時」とエンディングテーマ「飛ぼうよ」の2曲が流れる。前者を歌うのはVaundy、後者を歌うのはyama——しかし2曲ともVaundyが作詞・作曲・編曲のすべてをひとりで担当した。自分のOPだけでなく、別アーティストが歌うEDまでVaundyがプロデュースしているという事実は、案外知られていない。

その1年前には「SAKAMOTO DAYS」のオープニング「走れSAKAMOTO」を書き下ろし、本人が歌唱した。まったく作風の異なる2本のアニメに主題歌を提供しながら、「東京フラッシュ」(オリコン累計3億回超ストリーミング再生)「怪獣の花唄」(Billboard JAPAN累計9億回超ストリーミング再生)というソロの実績も持つ。26歳のVaundyは今や、アニソン制作側から最も声がかかるアーティストのひとりであり、同時にJ-POPシーンを牽引するソロアーティストでもある。

「アニソン量産」とも見える精力的な活動。だが実際には、「量産」という言葉が最も似合わないアーティストがここにいる。

Vaundyとはどんな人物か──2000年生まれ、全部自分でつくる26歳

Vaundyは2000年6月6日生まれの26歳(2026年8月時点)。東京都出身で、郁文館高等学校を経て日本大学芸術学部デザイン学科に進学した。活動開始は2019年6月のYouTubeへの楽曲投稿から。「東京フラッシュ」が口コミで広がり、2020年5月に1stアルバム「strobo」でメジャーデビュー。2022年12月31日の第73回NHK紅白歌合戦に初出場した。

Vaundyが他のアーティストと決定的に異なるのは、作詞・作曲・編曲に加え、アートワークのデザイン、MV映像のディレクションまで自分でこなすことだ。デザイン学科で培った映像・グラフィックの素養が、音楽表現と直結している。「全セルフプロデュース」と呼ぶほかない稀有な体制で、日本のポップミュージック界でもほとんど例がない。

「走れSAKAMOTO」と「飛ぶ時」──まったく違う2つのアニソン

「SAKAMOTO DAYS」は裏社会のヒットマンが家族のために戦うアクションコメディだ。2025年1月11日から放送が始まり、OPテーマ「走れSAKAMOTO」は主人公の無敵さと滑稽さを音で表したような楽曲になった。CDシングルは2025年3月5日にリリースされた。

一方、「黄泉のツガイ」は異界と現世が交差するファンタジーで、作品のトーンはより内省的で重い。OPテーマ「飛ぶ時」(2026年4月12日配信・7月8日CDリリース)は、その世界観に合わせた浮遊感と切迫感が混在する楽曲だ。同じ作曲家の手から、これほどまでに異なる2曲が生まれる──この幅こそがVaundyの強みだ。

さらに特筆すべきはEDテーマ「飛ぼうよ」の存在だ。yamaが歌うこの楽曲も、作詞・作曲・アレンジはVaundy。リリース形態がスプリットシングルで、Vaundy自身が「飛ぼうよ」を、yamaが「飛ぶ時」をそれぞれカバーして収録するという入れ子構造になっている。「OP曲を歌手が入れ替えて収録する」という実験的な企画を、アニメ主題歌という商業的な場で実現させたこと自体、Vaundyが単なる「納品者」ではないことを示している。

なぜVaundyは「選ばれ続ける」のか

アニメ制作サイドがVaundyに声をかける理由は、いくつか考えられる。

まず、依頼の完結度が高い。全セルフプロデュースであるということは、楽曲の世界観とMV・アートワークが一人の審美眼の下に統一されることを意味する。アニメ制作側からすれば、「音楽担当に任せたら映像との乖離が起きた」というリスクがない。

次に、作風に「ジャンルの壁」がない。本人のインタビューでは「作曲家的な視点とアーティストとしての自由さを両立させながらポップスを作っている」というスタンスが語られている。依頼する側からすれば、「どんな世界にも合う音を作れる人」という信頼感が生まれる。

そして、実績がある。「東京フラッシュ」の3億回超、「怪獣の花唄」の9億回超という数字は、Vaundyの楽曲が人の耳に届き続けることを証明している。

「葛藤」は本当に葛藤なのか──別の見方

アニメ主題歌の依頼が増えれば「Vaundyはアニソン屋になった」と見られるリスクはある。しかし、Vaundyの仕事の仕方を見ていると、「葛藤している」というより「上手に遊んでいる」という印象のほうが強い。

「SAKAMOTO DAYS」の「走れSAKAMOTO」は、誰が聴いてもVaundyの声とサウンドだとわかる。「飛ぶ時」も同様だ。アニソンの文脈の中にいながら、「Vaundyらしさ」を消していない。yamaとのスプリットシングルという実験も、「依頼仕事をこなした」だけでは生まれない発想だ。

坂本龍一が映画音楽の傑作を作りながらもソロアルバムを追い続けたように——作曲家とアーティストの二面性を生きることは、ある種の音楽家にとって「葛藤」ではなく「生き方の選択」だ。Vaundyはまだ26歳だが、すでにそのフェーズに入りつつある。

2026年のVaundy──次に何を見せるか

「飛ぶ時」が2026年夏に届いた今、次にVaundyが見せるものは何か。シングルとタイアップの蓄積を俯瞰する「アルバム」という答えが、そろそろ来るのではないかという予感がある。「2026年のVaundy」を一枚に収めるような作品が出てきたとき、彼が「アニソン量産マシン」ではなく「音楽家」であることが、改めて証明されるはずだ。

「飛ぶ時」というタイトルは、今のVaundyの状況をそのまま指しているようでもある。どこへ向かって飛ぶのか——その着地点を見届けることが、これからのリスナーにとっての最大の楽しみになるだろう。

まとめ

  • Vaundyは2000年6月6日生まれ・26歳。作詞・作曲・編曲・映像まですべてを一人で手がける「全セルフプロデュース」アーティスト
  • 「怪獣の花唄」は累計9億回超、「東京フラッシュ」は3億回超ストリーミング再生と、ソロとして圧倒的な実績を持つ
  • 2025年「SAKAMOTO DAYS」OP「走れSAKAMOTO」と2026年「黄泉のツガイ」OP「飛ぶ時」という全く異なる作風のアニソンを連発
  • 「黄泉のツガイ」ではyama歌唱のED「飛ぼうよ」も作詞・作曲・編曲を担当。スプリットシングルという実験的な形でリリース
  • アニソン仕事の増加は「葛藤」より「音楽的な遊び場」として機能しており、ジャンルを超えながらもVaundyらしさを失わない
  • 今後注目すべきは、タイアップ曲の蓄積を超えた「アルバムでの回答」

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