チャン・ウォニョン×ケラスターゼ|K-POPアイドルが”髪”をブランディングする新時代

ヘアサロンでポーズをとるプロのヘアドレッサー K-POP・韓流
Photo by Kampus Production on Pexels

髪一本に、戦略がある。

2026年3月、ラグジュアリーヘアケアブランド「ケラスターゼ」がIVEのチャン・ウォニョンをグローバルアンバサダーに起用した。原宿のアットコスメトーキョーで開催されたポップアップイベント「グロスアブソリュ」には、週末の原宿に似つかわしくないほど整然とした行列ができた。来場者のほぼ全員がスマートフォンを手に、ウォニョンが手に取ったであろう同じ製品を写真に収めた。

K-POPアイドルとラグジュアリーブランドのコラボは珍しくない。しかしこの組み合わせには、単なる知名度活用以上の「なぜ」がある。それはブランド戦略の転換点であり、K-POP文化が持つビューティー消費への影響力を証明する出来事でもあった。

ケラスターゼがアジアで仕掛けた「顔」の選び方

ケラスターゼはロレアルグループ傘下のプロフェッショナルヘアケアライン。1964年にフランスで誕生し、サロン発祥のプロフェッショナルケアを強みとして世界展開してきた。価格帯は一般的なシャンプーの5〜10倍。「高いけれど効く」というプレミアム認知が最大の武器だった。

そのケラスターゼが、近年アジア市場での「ラグジュアリーの民主化」という難題に直面している。韓国・中国・日本の若い世代にとって、ラグジュアリーとは「憧れるもの」から「共感できる人が使うもの」へシフトした。有名人が実際に使っているというストーリーが、ブランドへの入り口として機能する時代になった。

ウォニョンの選択は偶然ではない。2004年生まれ(2026年現在22歳)の彼女は、K-POPグループIVEのセンターとして2021年のデビュー以来、一貫して「洗練と清潔感」を体現してきた。毎回のカムバックで話題になるのは顔だけでなく、揺れる黒髪の動き。ヘアケアブランドにとってこれ以上のビジュアルは存在しない。

「グロスアブソリュ」ポップアップが仕掛けたこと

2026年3月末に原宿のアットコスメトーキョーで行われた「グロスアブソリュ」ポップアップは、単なる製品紹介イベントではなかった。

グロスアブソリュは、ケラスターゼの「光沢・艶感」に特化したラインで、ダメージケアよりも「美しく見せる」体験を前面に出したシリーズ。ポップアップでは、実際にヘアトリートメントを体験できるブースが設けられ、ウォニョンの等身大パネルとともに来場者がSNSにアップできる「映え」空間が丁寧に設計されていた。

アットコスメトーキョーという場所の選択も戦略的だ。渋谷系でも新宿でもなく、原宿。10〜20代女性が集まり、かつ美容コスメへの感度が高い層が回遊する場所。ケラスターゼの既存顧客層(30〜40代)とは異なるが、次の10年を見据えた「若い新規層の獲得」という意図が明確に読める。

多数のSNS投稿が確認され、アットコスメでのグロスアブソリュシリーズのレビュー数は期間中に急増した。特にIVEファン(DIVE)からの購入レポートがK-POPコミュニティ内で拡散し、「ウォニョンが使ってるシャンプー」という文脈で製品が広まった。

K-POPアイドルが”髪”で語る理由

K-POPとビューティーの関係は、メイクアップが先行してきた。BBクリーム、ティントリップ、アイシャドウパレット。韓国コスメブランドが世界市場に打って出た10年間、「K-POP顔」を作るためのスキンケア・メイクアップが主戦場だった。

しかし2020年代後半、ヘアケアが急浮上している。まず、K-POPアイドルのヘアスタイルの多様化だ。かつてはストレートの黒髪が定番だったが、現在はカール、ウェーブ、複雑なカラーリングが当たり前になった。その「美しい変化」を支えるヘアケア製品へ、ファンの目が向くようになった。

次に、カムバック映像でのヘアの見せ方が変わった。ミュージックビデオ・パフォーマンスビデオで、髪の艶や動きが4K映像で鮮明に映される。ウォニョンが踊るとき、髪が光の中でどう揺れるかを、ファンは画面越しに細部まで見る。

そしてSNS上でのヘア変遷報告。インスタグラムのリール、Weverse(旧Vライブ)での日常配信で、アイドルが自分のヘアケアルーティンを開示する機会が増えた。「何使ってるの?」という問いへの答えが、購買行動に直結する。

ウォニョンとケラスターゼ、ビジュアルの合致

ブランドとアンバサダーの相性を語るとき、「価値観の一致」がよく挙げられる。ケラスターゼが一貫して表現してきたのは「プロフェッショナリズムと美の追求」。グロスアブソリュラインではよりデイリーユースへの接近を図っている。「毎日のケアに、ちょっとした贅沢を」という文脈だ。

ウォニョンが体現するイメージは「努力が透けない完璧さ」。デビュー前の練習生時代から長く厳しいトレーニングを経てきたにもかかわらず、ステージに立つと「生まれ持ったもの」のように見える。その洗練さが、ケラスターゼの「プロの技術を日常に」という姿勢と重なる。

あるファンのSNS投稿が象徴的だ。「ウォニョンの髪がずっとあの艶なのは、ケラスターゼのおかげだったのかもしれない」。事実かどうかは関係ない。そう「感じさせる」キャスティングが成功した証拠だ。

まとめ:K-POP×ラグジュアリービューティーの新しい構図

  • ケラスターゼはアジア若年層開拓のため「共感できる顔」を戦略的に起用した
  • ウォニョンは「洗練と清潔感」の象徴として、ヘアケアブランドとの親和性が高い
  • 原宿ポップアップは「体験設計×SNS拡散×ファンコミュニティ」を組み合わせた消費接点
  • K-POPアイドルが髪で語る時代へ:メイクからヘアケアへのビューティー消費のシフト
  • ウォニョン個人の「努力を感じさせない完璧さ」がブランド価値と直結

ケラスターゼは今後もアジア市場でのコミュニケーションを強化するとみられる。ウォニョンとの契約がどれほどの期間続くのかは不明だが、少なくとも2026年の日本市場においては、「K-POP×ラグジュアリーヘアケア」という新しいカテゴリーを作り出した先駆的な一手として記憶されるだろう。

次は、あなた自身の髪に「グロスアブソリュ」を試してみるのも悪くないかもしれない。ウォニョンが触れたのと同じ光沢感を、日常の朝に探してみる。

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