なぜ日本人2人がK-POPを制したのか──宮脇咲良・カズハ、LE SSERAFIMで証明した越境の力

K-POPステージパフォーマンス K-POP・韓流
Photo by george charry on Pexels

日本人がK-POPグループに加わること自体は、もはや珍しくない。しかし2022年5月にデビューしたLE SSERAFIMには、単なる日本人メンバー在籍グループとは異なる何かがある。宮脇咲良カズハ──この2人が担う役割の重さと、それぞれがたどってきた軌跡を追うと、K-POP史にひとつの転換点が浮かび上がってくる。

HKT48センターが韓国に渡るまで

2018年、宮脇咲良は18歳だった。AKB48グループの総選挙で2年連続のトップ10入りを果たしながら、HKT48の絶対的センターとしての地位を固めていた時期だ。ところが同年秋、日韓合同プロジェクトIZ*ONEのオーディション番組PRODUCE 48に参加する。視聴者からの票で順位が決まるシステムの中、彼女は最終的に1位でデビューを掴んだ。

日本代表格として韓国に渡り、2年半のIZ*ONEでの活動を経た後、2021年にHKT48を卒業。そして翌2022年、HYBEのレーベルSOURCE MUSICからLE SSERAFIMの一員として再デビューを果たした。アイドルとしてのキャリアは12歳から始まり、25歳の今に至るまで13年間が経過している。

IZ*ONE活動期間中、宮脇咲良は韓国語を徹底的に習得し、K-POPのパフォーマンス文法を体に叩き込んだ。日本のアイドル文化に根差した可愛らしさとは異なる、切れのあるダンスと強度のある歌声──その二つを同時に求められる環境に、彼女は自分から飛び込んでいった。

バレエ少女が最強の自分を見つけた道

一方、カズハこと中村一葉(なかむら かずは)は異色の経歴を持つ。2003年8月9日、大阪府高槻市生まれ。3歳から橋本幸代バレエスクールに通い始め、クラシックバレエとコンテンポラリーダンスのトレーニングを積んだ。その後オランダ国立バレエアカデミーへの留学を経て、プロのバレリーナを目指していた。

K-POPへの転身のきっかけはBLACKPINKのパフォーマンスに衝撃を受けたことだったと本人が明かしている。コロナ禍でアカデミーの授業が減少したタイミングで、HYBEのオンラインオーディションに挑戦。練習生として2年以上を韓国で過ごし、2022年のLE SSERAFIMデビューメンバーに選ばれた。デビュー時の年齢はわずか18歳だ。

カズハの強みはフィジカルにある。バレエで培われた体幹と柔軟性、正確な身体コントロール──これがLE SSERAFIMのダンスパフォーマンスに際立ったビジュアル的なアクセントをもたらしている。身長170cmを超える長身と、バレエダンサーとしての佇まいが既存のK-POPアイドルイメージを少し拡張している。

FEARLESSからSPAGHETTIまで──進化の4年間

LE SSERAFIMは2022年5月2日にミニアルバムFEARLESSでデビューした。デビュー直前にメンバーのキム・ガラムに関する報道が噴出し異例のスタートを切った。キム・ガラムは同年7月に脱退し、現在は5人体制(サクラ、チェウォン、ユンジン、カズハ、ウンチェ)で活動している。

同年10月のANTIFRAGILEはMelonをはじめ韓国主要音楽チャートで1位を獲得。2023年のEASYは海外リスナーへのリーチを拡大し、2024年4月にはCoachellaのメインステージに立ったアジアのガールズグループとして大きな話題になった。

そして2025年10月24日発表のSPAGHETTI(feat. j-hope)──BTS・j-hopeとのコラボ楽曲が、LE SSERAFIMを再び世界的な注目の中心に押し上げた。SpotifyグローバルチャートでTop 20入り(最高19位)を達成し、リリースから約7週間で100Mストリーミング突破。これはLE SSERAFIM史上最速の100Mマイルストーンだ。

K-POP業界が日本人に求めるものが変わった

2010年代、K-POPグループに日本人メンバーが加わる主な目的は日本市場へのアクセスだった。しかしHYBEが宮脇咲良とカズハに期待したのはグローバルスターとしての実力だ。SOURCE MUSICの選定基準は徹底的にパフォーマンス重視であり、世界水準の舞台で戦える力量が優先された。宮脇咲良が韓国語を完全にマスターし、カズハがバレエ出身の身体能力をK-POPのダンスに転用したことは、この変化に対する2人の具体的な回答だ。

2人がLE SSERAFIMに与えたもの

宮脇咲良はグループ内で最年長かつ最長キャリアの立場から、パフォーマンスの安定感と現場経験を提供している。日本のアイドル産業で叩き込まれたファンとの距離感の作り方、ステージの空気の読み方は、K-POPのトレーニングでは補いにくいスキルセットだ。カズハはバレエ出身者特有のラインの美しさと身体表現の豊かさをK-POPに持ち込んだ。この2人が5人のメンバーの中に共存することで、LE SSERAFIMは均質なK-POPガールズグループとは異なるテクスチャーを持つことになった。

関連アーティストと比較して見えること

BLACKPINK(YG Entertainment)はグローバル展開を最初から前提とした設計のグループ、NewJeansは10代の自然体で全く別のアプローチ、aespaはメタバース世界観で差別化を図った。LE SSERAFIMが選んだのは強さとフィアレスネスというコンセプトだった。私たちは恐れないという宣言から始まったこのグループが、炎上スタートから4年で世界的ステージへ到達したことは、コンセプトと実力の両立という意味で稀有な成功例だ。その中で日本人2人が恐れず越境した存在であることは、グループの哲学と個人の軌跡が一致している点でリアリティを持っている。

まとめ

  • 宮脇咲良はHKT48センター・IZ*ONEを経て、25歳でK-POPの最前線に立つ13年選手
  • カズハ(中村一葉)は大阪出身のバレリーナからHYBE練習生へ。18歳でデビューし、身体表現の個性でグループに異彩を放つ
  • LE SSERAFIMはFEARLESS→ANTIFRAGILE→EASY→SPAGHETTI feat. j-hopeと進化し、2025年にSpotifyグローバルTop 20入り・100Mストリーミング最速突破を達成
  • K-POP業界における日本人メンバーの役割は日本市場向けからグローバル実力派へシフトした
  • 2人の異なる出自が、LE SSERAFIMに均質ではない強さのテクスチャーをもたらしている

SPAGHETTI feat. j-hopeが流れる度に、日本語を母語とする2人がK-POPの地図を塗り替えた事実を思い出してほしい。彼女たちのネクストステップが、またこちらの予測を外してくれることを期待している。

コメント

タイトルとURLをコピーしました