映画2本+連ドラ主演——高橋一生が2026年春に仕掛けた「3つの顔」の正体

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老人に変身するのに4時間かける俳優が、同時期に転生ドラマと戸籍詐欺コメディにも出ている。

2026年の春、高橋一生がやっていることはほとんど正気じゃない。4月10日に映画「脛擦りの森」公開、4月14日にテレビ朝日の連ドラ「リボーン〜最後のヒーロー〜」スタート、そして5月1日に映画「ラプソディ・ラプソディ」公開。約3週間の間に3作が重なる異例の同時展開だ。しかも3つの役は老人・IT社長兼下町青年・戸籍を勝手に書き換えられた独身男と、まったく別の人間である。この状況を整理しながら、俳優・高橋一生が2026年春にいったい何をやっているのかを見ていきたい。

4時間かけて老人になった男——映画「脛擦りの森」

映画「脛擦りの森」は、2026年4月10日に全国公開された61分の和製ホラーだ。岡山県に伝わる妖怪「脛擦り(すねこすり)」に着想を得た作品で、監督はNHKドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズと同じ渡辺一貴が担当している。

高橋一生が演じるのは「謎の男」。その正体は白髪の老人で、古めかしい神社に若い妻・さゆり(蒼戸虹子)と暮らしている。足に傷を負った若い男(黒崎煌代)が、女性の歌声に引き寄せられるようにこの神社に迷い込み、傷が癒えていく中で夢のような時間の中に取り込まれていく——というストーリーだ。

この役のために高橋一生が費やした時間が、撮影前日から毎日4時間。特殊メイクによる白髪の老人への変身がそれだけかかるのだという。撮影が終わっても、岡山・穴門山神社というロケ地の記憶が強烈に残ったらしく、本人は「あの場所の力は人間が作れるものではない」と語っている。

Filmarksでは公開直後の時点で253件のレビューが集まり、平均スコアは3.6点。上映時間が61分と短編に近い尺であることもあって、「濃密な体験」「短いのに長い映画を見たような余韻」といった感想が目立つ。

ホラーの皮を被った「時間の話」

作品の核にあるのは、おそらく「時間」だ。森に迷い込み、傷が癒えるにつれ現実感覚を失っていく主人公の構造は、日本の昔話に頻繁に登場する「神隠し」や「浦島太郎」のパターンに近い。高橋一生演じる老人が何者なのか、その謎が60分の間に明かされるというよりは、むしろ謎のままでいることで恐怖が持続する仕掛けになっている。

渡辺一貴監督との信頼関係も注目点だ。「岸辺露伴は動かない」シリーズで繰り返し組んできた二人が、今度はオリジナルの怪異譚で組んでいる。岸辺露伴が累計興収8.1億円超(2025年公開の「懺悔室」)を記録したことを考えると、この組み合わせへの期待値は相当高い。

一人二役で転生を生きる——ドラマ「リボーン〜最後のヒーロー〜」

「脛擦りの森」公開からわずか4日後の4月14日、テレビ朝日系・火曜夜9時枠でドラマ「リボーン〜最後のヒーロー〜」が初回拡大スペシャルで放送された。

高橋一生がここで演じるのは一人二役。ひとつ目は根尾光誠、新興IT企業を率いる冷酷無比な社長。もうひとつは野本英人、借金まみれの下町クリーニング店の跡取り息子だ。社会の頂点に立つ男が、2012年の下町商店街に生きる庶民の青年として転生し、まったく異なる人生を生き直す——という「社会派転生ヒューマンドラマ」の触れ込みだ。

転生系の物語はここ数年のエンタメで鉄板ジャンルになっているが、このドラマが面白いのは「若返って無双する」という方向ではなく、「下から這い上がる」という視点が入っている点だ。IT社長の根尾光誠は完成された人間として描かれているが、下町青年の野本英人を生きることで、何かが根本から変わっていく。タイトルの「リボーン(再生)」が指すのは、おそらくその変容だろう。

共演陣の豪華さも話題

共演には市村正親が名を連ねており、「高橋一生の大ファン」と公言している市村が現場で照れ笑いさせているというエピソードも話題になった。また共演の鈴鹿央士がスタッフ顔負けのセンスでオフショットを撮影し、高橋一生本人が「鈴鹿カメラマンがいい」とコメントしたことで、撮影現場の雰囲気の良さがSNSで広まっている。

戸籍に勝手に書かれた「妻」——映画「ラプソディ・ラプソディ」

3作の中で最もユーモラスな位置にあるのが、5月1日公開の「ラプソディ・ラプソディ」だ。

パスポート更新のために戸籍謄本を取り寄せたら、見知らぬ女性「繁子(呉城久美)」が「続柄:妻」として記載されていた。高橋一生演じる夏野幹夫は、この謎の女性と向き合うことで人生が予期せぬ方向に動き出す。監督は「身体」「ミルク」などで知られる利重剛で、今作は13年ぶりとなる長編作品だ。

高橋一生が演じる夏野幹夫は「天然で絶対に怒らない男」という設定で、これが「脛擦りの森」の老人や「リボーン」のIT社長とまったく違うトーンである。怒らないというのは単純そうに見えて、実際に演じるのは難しい。感情的な反応を見せないキャラクターは、内面をどう表現するかが問われるからだ。

音楽を世界的ジャズピアニストの大西順子が担当していることも注目点で、作品全体がジャズのようにリズムとズレを活かした空気感になることが期待される。

なぜ今、これだけ多彩なのか——45歳の俳優が選ぶ仕事の基準

3作を並べてみると、高橋一生が「役のトーンが被ること」を意図的に避けていることがわかる。老人・IT社長・天然の独身男という3役に共通するものはほとんどない。

高橋一生はインタビューで「1人2役を演じることで、違う作品を撮っている感覚」とコメントしている。役を積み重ねていくのではなく、毎回ゼロから別の人間を作るというアプローチ。これは長年の舞台経験に由来していると考えられる。

ゼロからキャラクターを作る力

舞台俳優は映像と違い、カットで区切ることができない。一度幕が上がれば2時間、3時間を一続きで生きなければならない。役の「論理」を最初から最後まで一貫させる訓練が、映像作品での多彩さにも繋がっている。

「岸辺露伴は動かない」シリーズでの岸辺露伴という役は、その意味で好例だ。荒木飛呂彦原作という強烈なオリジナルがありながら、高橋一生は原作のキャラクターを「再現」するのではなく、自分の体を通した「生きた露伴」を作り出した。累計興収8.1億円超という結果はその説得力の証明でもある。

9歳のデビューから「耳をすませば」まで——高橋一生という人物の輪郭

高橋一生は1980年12月9日生まれ、現在45歳。9歳で映画「ほしをつぐもの」に出演して子役デビューを果たし、1995年には14歳でスタジオジブリ映画「耳をすませば」に声優として参加している。天沢聖司の声として、あの繊細な少年を生きた。

90年代後半から2000年代前半、彼は「舞台俳優」として活動を積み重ねた時期に入る。扉座研究所(後の扉座)に入団し、舞台の世界で腕を磨いた時期が長い。この経歴が、後の映像での表現の幅に直接つながっている。

全国的な知名度を得たのは2016年の「シン・ゴジラ」と、2017年NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」での井伊直政役だ。このあたりから「名前と顔が一致する俳優」として認識され始め、2021年の「天国と地獄〜サイコな2人〜」(TBS)でのヒットを経て、現在の地位を確立した。

デビューから36年。子役、声優、舞台俳優、映画・ドラマの主演という複数の顔を持ちながら、キャリアのどこにも「同じ役を繰り返している時期」がない。2026年春の3作品は、その延長線上にある。

まとめ

  • 2026年春、高橋一生は映画2本(「脛擦りの森」4月10日・「ラプソディ・ラプソディ」5月1日)とドラマ1本(「リボーン〜最後のヒーロー〜」4月14日〜)が同時期に重なる異例のスケジュールで活動中
  • 3作の役どころはそれぞれ「白髪の謎の老人」「IT社長兼下町青年(一人二役)」「絶対に怒らない天然の独身男」と全く異なるトーン
  • 「脛擦りの森」では毎日4時間の特殊メイクを施し、渡辺一貴監督との再タッグで和製ホラーに挑む(Filmarks 3.6点)
  • 「リボーン」は転生×社会派のハイブリッドで、一人二役による演技の幅が見どころ
  • 「ラプソディ・ラプソディ」は利重剛監督の13年ぶり長編。戸籍詐欺から始まるコメディタッチのヒューマンドラマ
  • 9歳デビュー・「耳をすませば」声優・舞台俳優という重層的なキャリアが、役の振れ幅の大きさを支えている

昨年公開の「岸辺露伴は動かない 懺悔室」が累計興収8.1億円超を記録したばかりの高橋一生が、今度はまったく異なる三者として銀幕とブラウン管に現れる。春の夜に、この3作のうちどれか一本だけでも手に取ってみてほしい。

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