2年間でメンバー半減、それでも解散しなかった——Homecomings『knit』に込められた音楽的仕掛けと継続の意志

Homecomings indie band music performance 音楽
Photo by ANTONI SHKRABA production / Pexels

マイナス17度の雪原で、2人は立っていた。2026年1月14日リリースのHomecomings『knit』のMV撃影地だ。4人だったバンドが2人体制になって初めて世に出す楽曲のビジュアルとして、なぜそんな過酷な場所を選んだのか——その問いへの答えは、楽曲そのものの構造に隠されている。

約2年で4人から2人になったバンドの記録

Homecomingsは、畔野彩加(Vo/Gt)・福富優樹(Gt)・石田成美(Dr)・福田穂那美(Ba)の4人組として活動してきた京都発のインディーポップバンドだ。2024年2月、ドラムの石田成美が「家族との未来と自分の体のことを考えたとき、3人と同じペースで音楽活動を続けることが難しいと判断した」として卒業。サポートメンバーを过えて3人体制で活動を続けた。そして2025年12月18日、今度はベースの福田穂那美がEX THEATER ROPPONGIでのワンマンライブをもって正式にバンドを去る。「Homecomingsを卒業し、自分の人生の第二章を始めることにしました」という言葉を残して。石田の卒業から約2年、4人だったバンドは畔野と福富の2人になった。

「解散も含めて検討した」——それでも2人で続けることを選んだ夜

インタビューで明かされているのは、畔野と福富が解散を含めた選択肖を真剣に話し合ったという事実だ。それでも2人はバンドの継続を選んだ。福富は福田の卒業について「大切なともだちのままでいながら、それぞれのタイミングでそれぞれの線は分かれていく。あの頃小さな部屋で何気なく始まった4人にとって、とてもしあわせなことだと思う」と語っている。喪失への淆きではなく、静かな肃定の言葉だ。その感情がそのまま『knit』という楽曲に流れ込んでいる。

歌詞と音に施された二重の仕掛け

『knit』の制作は、福富が1番の歌詞を書き、それを見た畔野がメロディをつけて「泣いてしまった」とメッセージを送るところから始まった。2人の感情が行き来しながら楽曲が編まれた——「編む」を意味する英単語『knit』は、そういう意味でも正確なタイトルだ。歌詞のテーマは「恋愛に限らない愛の形」「性別を超えたきょうだいのようなつながり」。4人の関係性、2人になってからの関係性、そしてドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」の登場人物たちの関係性——複数の文脈が重なるように設計されている。レコーディングには吉木諦穐(The Novembers)、関根史織(Base Ball Bear)、高井息吹が参加した。

今泉力哉との7年越し、3度目のタッグ

「冬のなんかさ、春のなんかね」は今泉力哉が監督・脇本を手がけた日本テレビの水曜ドラマで、杯和花が主演を務める。今泉力哉とHomecomingsのコラボレーションはこれで3度目だ。2019年の映画「愛がなんだ」、2025年の積水ハウスCMに続く、7年越しの関係。今泉監督は「Homecomingsの音楽には寂しさと温かさ、親しみやすさと冷たさの共存がある」と語っている。2人体制の『knit』にも、その両面は確かに存在している。

冷えた雪原が映していたもの

『knit』には、過去のメンバーへの感情も、現在の2人の決意も、どちらも溢れ込んでいる。「悲しい曲」とも「希望の曲」とも単純に言い切れないのが、この楽曲の強さだ。マイナス17度という温度ごとMVの世界観に取り込んだ2人が証明しようとしたのは、Homecomingsとして生き続ける意志だった。バンドをまだ聴いたことがない人は、ぜひ『knit』から始めてほしい。

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