「13歳が起こした殺人事件」をワンカットで描くNetflixドラマ『アドレセンス』が世界で話題な理由

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「カット、なし。4話、全部。」

この一文でピンときた人は、すでに『アドレセンス』の沼にはまっている。Netflixが2025年3月に配信開始したイギリスドラマ『Adolescence(アドレセンス)』は、公開からわずか数週間でNetflix史上トップクラスの視聴数を記録し、全4話がすべてワンカットで撮影されているという前代未聞の映像手法で世界を震わせた。

ワンカットって、そんなにすごいの?

映画好きなら『バードマン』(2014年)や『1917 命をかけた伝令』(2019年)を思い浮かべるかもしれない。ただ、あれらは「ワンカット風」に編集された作品だ。つなぎ目を見えにくくした擬似ワンカットで、実際はカットが存在する。『アドレセンス』は違う。本当に、カットがない。1話分=約60分間、カメラが止まることなく撮影される。俳優たちは台詞を間違えられず、移動シーンのカメラワーク、照明の切り替え、エキストラの動き——すべてがリアルタイムで展開される。製作陣はリハーサルに数ヶ月を費やし、本番は各エピソードごとに数テイクしか撮影できなかったという。この緊張感が画面にそのまま宿っている。

13歳の少年が起こした事件

舞台はイギリスの工業都市。13歳の少年ジェイミー・ミラーが、同級生の少女を刺殺した疑いで逮捕される。第1話は逮捕直後の家宅捜索と連行。視聴者はカメラとともに家族の混乱の中に放り込まれる。第2話は警察の取調室、第3話は少年院での心理士との面談、第4話は逮捕から約1年後の家族の日常。各話ごとに視点と舞台が変わりながら、「なぜ彼は殺したのか」という問いへ少しずつ迫っていく。

SNSが生んだ「インセル」という現代の病

ドラマが正面から向き合っているのが、SNS上に広がる「インセル」文化だ。インセルとはinvoluntary celibate(非自発的独身者)の略で、ドラマの描写では女性への怒りや憎悪をオンラインで共有するコミュニティとして描かれる。刑事がその記号を解読しようとするシーンは背筋が凍る。デジタルネイティブ世代の内側で育つ価値観を、大人はどれほど把握できているのか——ドラマはその問いを、答えを出さないまま視聴者に手渡す。

「子どもへの手紙」として作られた作品

脚本はジャック・ソーン、主演・製作総指揮はスティーヴン・グラハム。グラハムは「自分の子どもたちへの手紙として作った」と語っており、エンタメ的驚きの裏に強烈な切実さがある。息子ジェイミーを演じた若手俳優オーウェン・クーパーは取調室での30分超のワンカットを演じきり、各国メディアから絶賛を受けた。

見るなら1話ずつ間を置いて

軽い気持ちで見始めると、第2話の取調室シーンで確実に胸が苦しくなる。それはドラマが失敗しているのではなく、成功している証拠だ。全4話、約4時間。1話ごとに少し間を置いてほしい。各話が独立したドキュメンタリーのような余韻を持っているから、そのまま次に進むより体験が深まる。

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