芳根京子の声で泣ける。ピクサー最新作『私がビーバーになる時』が3月公開中

ビーバーと自然の川 映画・ドラマ
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ピクサーの最新作『私がビーバーになる時』に、日本のジブリ作品が影を落としている。そんな意外なつながりを知ってから映画館に向かうと、スクリーンの見え方が変わるかもしれない。2026年3月13日に日本公開を迎えたこの作品で、主人公メイベルの日本語吹替を担当するのが芳根京子だ。

■ジブリと同じ「水辺と人間の物語」

本作で監督が繰り返し語るインスピレーションのひとつが、1994年公開のジブリ映画『平成狸合戦ぽんぽこ』だ。タヌキたちが宅地開発から森を守ろうと戦うあの物語と同じく、『私がビーバーになる時』も「自然環境の破壊と再生」をテーマの根幹に置いている。ただし、ぽんぽこと違うのはカメラの位置だ。本作では人間側でも自然側でもなく、その境界線に立たされた少女の視点から物語が進む。人間としての記憶を持ちながら、ビーバーとして川のダムを守ろうとするメイベルの葛藤は、子どもにも大人にも刺さるリアルさがある。ピクサーがここまで直接的に日本アニメの影響を認めるのは珍しい。それだけ平成狸合戦ぽんぽこの問題提起が、25年以上たった今も世界のクリエイターに届いているということだろう。

■推し声を映画館で聴く体験

今回、主人公メイベルの日本語版吹替を担当するのが芳根京子だ。近年はAIをテーマにしたドラマで注目を集め、さらに表現の幅を広げている彼女が、アニメキャラクターの声に挑む。その答えは、実際にスクリーンの前に座った瞬間に届く。芳根の声は、強さと脆さが奇妙に共存している。怒鳴るシーンも、泣くシーンも、何かを決意するシーンも、作られた感情ではなく漏れ出てしまった感情に聴こえる。ビーバーになって戸惑うメイベルの独白パートは、声だけで泣かせにくる圧がある。吹替版で大地真央が大人のメイベルを担当しているのも見逃せないポイント。ベテランの落ち着いた語り口と、芳根の若い感情表現が交互に流れる構成が、本作の過去と現在をつなぐ構造とも呼応している。

■ピクサーのお得意技と今回の新しさ

ピクサー作品の強みは子どもが楽しめて大人が泣ける二重構造にある。2020年のソウルフル・ワールドでは生きることの意味を、2022年のバズ・ライトイヤーでは自分の選択と後悔を扱った。本作のテーマは帰属だ。どこに属しているのか、何者なのか——これはZ世代が最もリアルに感じている問いでもある。メイベルはビーバーとして川を守りながら、同時に人間としての居場所も探し続ける。どちらかを選ぶのではなく、どちらでもあれる場所を自分で作ろうとする彼女の姿には、ロールモデルとして機能しうる強さがある。映像面では水の表現に特に力が入っており、川面の反射やダムに溜まる水、雪解けで増水する春の流れは、1本の映像作品になるレベルの美しさだ。

■春の映画館で、ビーバーの声を聴く

本作は3月13日より全国公開中。特に音響のいいシアターでの鑑賞がおすすめだ。水の音、ビーバーの鳴き声、森の環境音——すべてが計算されたサウンドデザインで構成されており、自宅のテレビでは再現できない没入感がある。芳根京子ファンはもちろん、ピクサーが好きな人、ジブリ的な自然と人間の物語が好きな人、声の演技で涙が出た経験がある人には全力でおすすめしたい。春の映画館で、ビーバーになった少女の声を聴いてほしい。

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