「思っていたより、ずっといい」——2026年3月13日公開の映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』を観た人間が共通して漏らすこの言葉。原作漫画は累計3000万部超を誇る野田サトルの大ヒット作。明治末期の北海道を舞台にした金塊争奪サバイバルは実写化の難しさでも知られていたが、山崎賢人主演の本シリーズは確かに答えを出しつつある。
三陣営が激突する「網走監獄」という舞台
本作のクライマックスは、タイトル通り北海道・網走監獄への総攻撃だ。主人公・杉元佐一(山崎賢人)の一行、鶴見中尉(玉木宏)率いる第七師団、そして土方歳三(舘ひろし)——三つの勢力がそれぞれの思惑を抱えて激突する。この三陣営の動きが複雑に絡み合うのが原作の醍醐味だが、映画版は長尺の中でうまく整理している。馬と雪と銃弾が交錯する映像には、シリーズを重ねるごとに積み上げてきたスタッフの技量が凝縮されていた。
山崎賢人、体で語る「不死身の男」
「不死身の杉元」という異名を持つ主人公を演じるために、山崎賢人は相当の肉体改造を行ったとされる。その成果は画面越しにも伝わってくる。筋肉の変化だけでなく、特筆すべきは「目」だ——穏やかな表情から一瞬で戦場の顔に切り替わる、そのスイッチの鋭さが、何度も観客を現実から引き剥がす。山田杏奈演じるアシリパとの掛け合いも健在で、緊張感の中に笑いが挟まる原作特有のテンポを忠実に再現している。
実写だから見えた、北海道とアイヌの色
漫画のモノクロページでは伝えきれなかった色と温度が、本作の映像的な強みだ。雪原の白さ、網走の荒涼とした空——これらがスクリーンに広がる体験は、原作ファンにとって新たな発見になる。アイヌ文化の描写にも注力されており、衣装・文様・言語の再現には専門家監修が入っている。エンタメとしての面白さを保ちながら、文化的考証を疎かにしない姿勢は、シリーズを通して一貫している。
「続き」を渇望させる終わり方の巧さ
本作は「完結」ではない。三陣営の決戦は一定の決着を見せながらも、それぞれの物語の続きをにおわせて幕を閉じる。観終わった後に残るのはすっきりとした達成感ではなく、「次が観たい」という焦がれるような感覚だ。明治という時代の激動と個人の意地が交差するとき——エンタメの皮をかぶった「人はなぜ生きるのか」という問いが静かに刺さってくる。まずは第1弾(2023年公開)から観て、この熱量に追いつく価値は十分にある。


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