役所広司がカンヌ映画祭男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」(2023年)を観た人なら、きっと気になったはずだ。主人公の清掃員・平山の静かな日常に、ふいに現れる強烈な存在感を持つ若い女性のことを。その人物の名はアオイヤマダ。ダンサーとして、そして俣優として、既存のジャンルを軽々と越えてきた異色の表現者だ。
コンテンポラリーダンスから五輪の舞台へ
アオイヤマダのキャリアはコンテンポラリーダンスから始まった。身体表現の精度と独創性は国内外のシーンで評価を集め、2021年には東京オリンピック閉会式のパフォーマーとして出演。絅6乴8千人を収容するオリンピックスタジアムと、世界中に中継されるテレビ画面の前で、彼女は踊りをもって存在を刷んだ。当時その名前を知っていた人は少なかったが、あの夜の映像を記憶している人は多かったはずだ。
PERFECT DAYSでカンヌの舞台へ
「PERFECT DAYS」でアオイヤマダが演じたのは、アヤという名の人物。台詞は最小限で、身体で語ることが求められる役だった。ドイツが生んだ映画の巨匠・ヴィム・ベンダース監督がその役に彼女を選んだのは必然だったかもしれない。本作は2023年カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、役所広司が男優賞を受賞した。
次作「炎上」での主役
2026年4月10日公開予定の「炎上」(長久允監督)では、より中心的な役割を担う。三葉陽子という障害を持つ少女を演じ、公開前から映画ファンの間で注目を集めている。
舞台と映画を行き来す越境する表現者
映像での評価が積み重なる中、アオイヤマダはKAAT神奈川芸術劇場での舞台にも出演している。カット割りもリテイクも存在しない舞台は、ダンサーとしての彼女の感覚に近い場所だ。観客と同じ空気を吸いながら、リアルタイムに身体ひとつで語りかける――その体験こそが、彼女が「越境する表現者」たる所以だ。
ダンサー、映画俣優、舞台女優。ジャンルの壁を軽々と越えながら、アオイヤマダは表現の射程を着実に広げている。まだ「PERFECT DAYS」を観ていないなら、今すぐ動画配信サービスで確認してほしい。彼女が画面の中で放つ存在感を目にすれば、なぜこれほど多くの作り手が彼女を選ぶのかが、静かに伝わってくるはずだ。


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