BTS完全体アルバム『ARIRANG』——兵役を越えた7人の帰還と、アリランに込めた3年間の物語

BTS K-POPコンサートのステージ K-POP・韓流
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7人が揃ってステージに立つ。ただそれだけのことが、どれほど待ち望まれていたか。

BTSが2026年にリリースした6年ぶりのフルアルバム「ARIRANG」は、発売と同時に日本のiTunesチャートで1位を獲得した。東京ドーム公演のチケットはほぼ瞬時に完売し、先行抽選には驚異的な数のファンが殺到したという。数字が示すのは、3年以上の活動休止があっても、彼らへの支持はいっさい揺らいでいないという事実だ。

なぜ今、BTSなのか。なぜ「アリラン」なのか。その答えは、7人が歩んできた3年間の物語にある。

兵役という名の「別れ」——7人が順に旅立った日々

2022年末、BTSは兵役に伴う活動休止を正式に発表した。韓国では男性に兵役の義務があり、K-POPアイドルも例外ではない。グループ最年長のジン(本名:キム・ソクジン)が2022年12月に最初に入隊した。

その後、2023年から2024年にかけて、j-hope、RM、SUGA、ジミン、V、ジョングクが次々と入隊。7人全員が兵役に就くまでの約2年間、BTSは事実上の活動休止状態となった。

ARMYにとってこの期間は「応援の仕方を覚え直す」時間だったという声が多い。メンバー個人のSNS更新を待ち、除隊のニュースに涙し、一人ひとりのソロ活動に声援を送る。グループとしてのBTSがいない日々に、ファンたちは適応しながらも完全体復帰を待ち続けた。

最初に除隊したジンは2023年6月、次いでj-hopeが2024年2月に除隊。7人全員が揃ったのは2025年後半のことだ。その日、SNSには「家族が帰ってきた」「待ってた甲斐があった」という投稿があふれた。

「ARIRANG」というタイトルが持つ意味——600年の歴史を持つ民謡と現代のポップスター

「アリラン(ARIRANG)」は、韓国を代表する民謡だ。起源は諸説あるが、少なくとも600年以上の歴史を持つとされ、2012年にはユネスコの無形文化遺産に登録されている。

歌詞の基本テーマは「別れ」と「旅立ち」。愛する人が峠を越えて去っていく哀愁が歌われる。しかし同時に、アリランは「再会」の歌でもある。BTSがこのタイトルを選んだのは、兵役という「現代の旅立ち」を経て7人が再び集まったドラマを、アリランという普遍的な物語に重ね合わせたからだ。

RM(本名:キム・ナムジュン)は日本のメディアにこう語っている。「兵役に行く前、アリランを聴くたびに、これは僕たちの物語だと感じた。別れて、また戻ってきて、一緒に歌える。それがこのアルバムのすべてです」。

ソロ活動で見せた”深化”——7人が別々に成長したから生まれた化学反応

RMはより文学的・芸術的な方向性を強め、ソロアルバム「Indigo」「Right Place, Wrong Person」を発表した。SUGAはAgust Dという名義で世界ツアーを実施。j-hopeはコーチェラ・フェスティバルへの出演を果たし、韓国人アーティストとして歴史的な一歩を刻んだ。

そしてジョングクの「Seven(feat. Latto)」は2023年に全米Billboard Hot 100で1位を獲得。7人それぞれがソロとして磨き上げた個性が、「ARIRANG」では一つの作品として結実している。ソロ活動というプロセスがあったからこそ、完全体は以前よりも深みを持って機能している。

東京ドーム公演——チケット争奪戦が示す熱量

「ARIRANG」のリリースと並行して発表された日本公演は、東京ドーム(収容人数約55,000人)での複数日程開催。BTSは2019年に東京ドームで4日間21万人超を動員している。チケット発売に際しては先行抽選に多数のファンが殺到し、一般販売開始時には購入サイトがダウン。配信ライブ実施告知だけでSNSトレンド入りを果たしたことは、このグループが持つ影響力の大きさを物語っている。

アルバム「ARIRANG」——聴くべき3曲

全12曲収録のアルバムから注目の3曲を紹介する。

タイトル曲「ARIRANG (아리랑)」

伝統的なアリランのメロディを現代的なポップスアレンジで昇華した楽曲。7人が声を揃えて「去って、また戻った」という物語を歌い上げ、MVでは韓国の伝統的な意匠と近未来的なビジュアルが融合している。

「HOME」

6人のメンバーが作詞に参加。「7人そろってはじめて家に帰れる気がした」という一節が心に刺さる。穏やかなメロディがフィナーレに向かってオーケストラと重なり、圧倒的なスケール感を持つ。

「SEVEN (Remix)」

ジョングクのソロヒットのグループリアレンジ版。7人で歌うことで「7人だから7なんだ」という新たな解釈が加わる。ファンの間で「涙なしには聴けない」と話題になっている。

ARMYたちが語る「3年間の重み」

「3年間、ソロでも追い続けたけど、7人が揃った瞬間、私が好きだったのはBTSだったんだと気づいた」「アリランってこんな曲だったのかと初めて知った。韓国の文化を通してBTSを理解する楽しさがある」「チケット取れなかったけど、配信で絶対観る。東京ドームに7人がいる事実だけで十分」——こうした声に共通するのは、BTSへの愛着が「消費」ではなく「関係性」として機能している点だ。

まとめ:BTSと「アリラン」が示すもの

  • BTSは2022年末から兵役入隊を開始し、2026年に完全体フルアルバム「ARIRANG」を発表
  • 「アリラン」は600年以上の歴史を持つ韓国民謡で「別れと再会」がテーマ。BTSの兵役物語と重なる
  • 東京ドーム公演のチケットは発売と同時に争奪戦となり、配信告知だけでもSNSトレンド入り
  • 各メンバーのソロ活動で磨かれた個性が完全体として結実し、批評家からも高い評価
  • アルバムは韓国文化への誇りとグループの絆を表現した作品として世界中のARMYに届いている

「アリランを越えていく」——その先に何があるか、BTSはまだ語っていない。でも次の峠を、私たちは彼らと一緒に越えたいと思っている。

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