2026年、映画館を席巻する男
映画館のポスターを見上げると、そこには山崎賢人の顔がある。配信サービスを開いても山崎賢人が出ている。7月の公開ラインナップを調べると、またしても山崎賢人だ。気づけば2026年の日本映画シーンは、ひとりの俳優を中心に動いている。
同一年に複数の大型作品で主演を務めるケースは、日本映画界でもそう多くない。プロモーション疲れや食傷感を指摘する声もあるが、不思議と山崎賢人の場合はそれが起きにくい。理由はシンプルだ——毎回、ジャンルもトーンも世界観もまるで異なる作品を選んでいるからである。歴史アクション、サバイバルスリラー、北海道を舞台にした時代劇……その振り幅の広さが、「次はどんな顔を見せてくれるのか」という期待を観客に持続させ続けている。
数字が証明するヒットの連鎖
山崎賢人の主演作の興行成績を並べると、その実績は圧倒的だ。
「キングダム」(2019年)は公開直後から動員記録を更新し続け、最終的に57.3億円の興行収入を記録。シリーズ第2作「キングダム2 遥かなる大地へ」(2022年)は52億円超、第3作「キングダム 運命の炎」(2023年)は約37億円と、3作合計で150億円を超えるシリーズ累計興収を達成した。2026年7月に公開予定の最新作を含めれば、シリーズ累計200億円規模に迫るとみられている。
「ゴールデンカムイ」(2024年)は累計発行部数3100万部を超える原作漫画の実写化として公開前から注目を集め、公開後も口コミで観客が増加し続けるロングランヒットを記録した。北海道の自然環境や明治時代の背景をリアルに再現したセットと衣装は映像作品として独立した完成度を誇り、「原作ファンも実写として楽しめる」との評価を獲得した。
Netflixドラマ「今際の国のアリス」は2021年の配信開始後、わずか数日で世界190か国以上のトップ10入りを果たし、日本発コンテンツとして異例の国際的評価を獲得。シーズン2も高評価を受け、海外ファンから「これが日本エンタメの実力だ」と称される作品となった。
モデルから俳優へ——キャリア14年の積み重ね
山崎賢人は1993年9月7日生まれ、スターダストプロモーション所属。10代でファッション誌のモデルとして活動を始め、2012年に映画初主演を務めた。当時から雑誌モデルのルックスとは裏腹に、体当たりの演技を厭わないスタンスで業界内から注目されていた。
20代前半、彼はインタビューで「自分の演技はまだ荒削りだと思っている」と繰り返した。その言葉は謙遜ではなく、実際の試行錯誤の記録でもあった。映画、ドラマ、配信作品と場を問わず出演し続け、30代に入った今もその謙虚さを崩さないまま、毎年新しい代表作を更新し続けている。
「実写化請負人」と呼ばれる理由
ネット上では「実写化請負人」という呼称が定着しているが、山崎賢人本人がその言葉を積極的に肯定したことはほぼない。インタビューで繰り返し語るのは「原作への敬意」と「チームとして作り上げる現場への信頼」——つまり、自分を作品の顔として売り出すのではなく、作品世界に徹底して没入する姿勢だ。
彼のフィルモグラフィーを眺めると、一定のパターンが見えてくる。「ジョジョの奇妙な冒険」「キングダム」「ゴールデンカムイ」「今際の国のアリス」——選ばれる作品はほぼ例外なく、コアなファンベースを持つ原作の実写化だ。どれも「実写化は難しい」と言われていた作品ばかりで、それをことごとく乗り越えてきた実績がある。
ハードルの高さは裏を返せば、ファンの熱量の高さでもある。既存ファンが映画館に足を運び、SNSで感想を拡散し、未読者が原作に手を伸ばす——この循環を繰り返すことで、単なる「原作の実写版」を超え、独自の支持層を持つシリーズへと成長させていくのが山崎賢人主演作の特徴だ。
アクション俳優としての肉体改造と現場への向き合い方
「キングダム」では古代中国の兵士・信を演じるために激しい殺陣を習得し、撮影前に筋肉量を大幅に増加させたことが複数のメディアで報じられた。「ゴールデンカムイ」でも北海道の過酷な自然環境でのアウトドアシーンをこなし、アクションとドラマの両立に挑んだ。剣を振るう動作、馬上での演技、極寒の屋外ロケ——作品ごとに異なるフィジカルな要求に応え続ける姿は、モデル出身俳優のイメージを完全に塗り替えるものだった。
こうした努力と積み重ねを背景に、日本アカデミー賞では優秀主演男優賞の候補にも名前が挙がるようになった。映画業界内での評価の高さは、興行成績だけでなく、演技賞のノミネートという形でも証明されつつある。
2026年7月「キングダム」最新作が問うもの
7月に公開予定の「キングダム」最新作は、原作の累計発行部数9700万部以上(2024年時点)を誇る人気漫画の実写化シリーズの最新章だ。前作までに築いてきた壮大なスケールをどう超えるかが最大の見どころとなる。シリーズを通じて監督を務める佐藤信介のもと、山崎賢人演じる信がどこまで成長を遂げるのか——原作ファンも映画から入った新規ファンも、そのクライマックスを息を呑んで待ち構えている。
まだシリーズを追えていない人も、前3作を今から追いかければ7月の公開には十分間に合う。1作目の「キングダム」から見始めれば、その世界観の壮大さに一気に引き込まれるはずだ。
消費されない俳優が持つ「更新力」
旬のうちに使い切られ、消費されていく俳優がいる一方で、山崎賢人は作品ごとに観客の印象を鮮やかに上書きし続けている。1993年生まれの32歳、キャリア14年。これほどのペースで話題作の主演を張り続けながら、飽きられないどころか次回作への期待が毎回高まり続けるのは、単なる知名度やルックスだけでは説明できない。
「実写化請負人」という呼称は少し軽い。この俳優の本質は、ハードルが高い原作と真剣に向き合い、ファンの期待と格闘し、それをスクリーンの上で毎回形にしてきた「積み重ね」にある。まだ山崎賢人の作品に触れたことがないなら、今この瞬間が最良の入口だ。


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