朝5時、撮影所のメイクルームに目黒蓮が入る。用意されているのは、ビジュアル系のジャニーズアイドルとはかけ離れた、丸みを帯びた体型を再現するための特殊メイク用具一式だ。完成までにかかる時間、約4時間。そこから始まる撮影は、彼がこれまで歩んできた「顔で売る」芸能生活とは対極にある場所に、いつの間にか彼を連れてきていた。
2026年4月29日公開の映画「SAKAMOTO DAYS」。原作は鈴木祐斗による週刊少年ジャンプの大人気漫画で、最強の殺し屋だった男が恋をして引退し、コンビニを経営する「おじさん」になった坂本太郎の物語だ。この役を射止めたのは、Snow Manの目黒蓮。ゴールデンウィーク8日間で興行収入15億円、138万人を動員した本作で、目黒蓮は「アイドル俳優」という言葉を塗り替えた。
坂本太郎という「規格外」の役
坂本太郎という人物を知っているだろうか。「SAKAMOTO DAYS」の主人公で、かつては殺し屋業界で伝説と呼ばれた存在。だが恋をして結婚し、今は娘に溺愛されながら近所のコンビニを経営する「丸くなったおじさん」だ。
「丸くなった」は比喩ではなく物理的なもので、原作では約140kgの体型として描かれている。ぽよぽよとした外見でありながら敵が現れた瞬間に超高速の動きで制圧する──そのギャップが原作の核心だ。目黒蓮がこの役に挑むにあたっての答えは特殊メイクだった。
特殊メイク4時間が語る「覚悟」
制作陣が用意したのは全身を太って見せるための特殊メイク。撮影期間(2025年5〜8月)中、毎日の撮影前に目黒蓮はメイクチェアに約4時間座り続けた。朝9時スタートなら起床は4時台。アイドルにとって「見た目」は根幹的な商品価値だ。それをわざわざ別の形に変えるのは、ビジネス的には決して得策ではない。
だが目黒蓮は迷わなかったと現場関係者は語っており、「最初から太ったバージョンをちゃんとやりたいと言っていた」という話が公開後のインタビューで浮かんできた。ここに「アイドルとしての目黒蓮」と「俳優としての目黒蓮」の分岐点がある。
戦闘シーンという「もう一つの顔」
目黒蓮の挑戦は特殊メイクだけで終わらない。原作の魅力のひとつは、ぽよぽよのおじさんが驚異的なスピードで動くギャップにある。映画でもこの戦闘シーンの坂本を目黒蓮自身が演じる。つまり「ふくよかな坂本」と「戦闘中の坂本」の両方を同じ目黒蓮が表現することになる。
監督の福田雄一は「銀魂」実写版を手がけた演出家で、その判断の正しさは結果が証明した。ゴールデンウィーク8日間で興行収入15億円、138万人動員は、実写化作品としては十分な成功だ。
silentから始まった「本物」への道
目黒蓮が俳優として本格的に注目されたのは、2022年のフジテレビ系ドラマ「silent」だった。先天性難聴を持つ佐倉想(さくらそう)を演じ、複雑な感情を抱えた青年を繊細に表現して話題になった。2023年の「トリリオンゲーム」(TBS系)で主演、2024年の「海のはじまり」(フジテレビ 月9)でメインキャスト──この4年間で「目黒蓮という俳優」として認識される流れが固まった。
ファンが感じた「誇れる推し」という感覚
公開後のSNSを見ると、Snow Manファン(スノ担)の反応がいつもと少し違う。「ずっと応援してきたけど、今回の蓮くんはそれを超えてきた」「ファンじゃない友人にも刺さった」──そんな声が散見される。特殊メイク4時間という事実が知れ渡り、アイドルの枠を超えたプロ意識として受け取られた。
まとめ
- 2025年5〜8月の撮影期間中、毎日4時間の特殊メイクを続けた
- ふくよかな坂本と戦闘中のシャープな坂本という二面性を一人で担った
- ゴールデンウィーク8日間で興行収入15億円、138万人を動員
- 「silent」以来続いてきた俳優評価が主演映画でひとつの形になった
アイドルが映画の主演を張ることは珍しくない。だが「アイドル映画」ではなく「映画として評価される作品」に仕上げるのは別の話だ。目黒蓮は今、その境界線を越えようとしている。次にどんな役と出会うのか──その期待が、ファンであっても映画ファンであっても生まれているなら、それ自体が「俳優・目黒蓮」の証明だろう。SAKAMOTO DAYSは現在サブスクリプションサービスでの配信も始まっており、映画館で見逃した人でも今から追いかけられる。

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