東京ドームのマウンドに、あの声が降り注いだ。
2026年3月、WBC2026(ワールド・ベースボール・クラシック)開幕に合わせて公開されたB’z・稲葉浩志による「タッチ」のカバーが、瞬く間にSNSを席巻した。1985年に岩崎良美が歌ったアニメ主題歌を、61歳の稲葉浩志が原曲キーのまま歌い上げる——その映像は公開から3日で100万再生を突破した。
なぜ今、「タッチ」なのか
「タッチ」は1985年放送のアニメ主題歌で、作詞・康珍化(こう・ちんふぁ)、作曲・芹澤廣明のコンビによる楽曲だ。岩崎良美の透明感ある高音が印象的で、野球を題材にした青春ドラマとの相乗効果もあり、当時の子どもたちの記憶に深く刻まれた。2026年のWBC応援企画でこの曲が選ばれた背景には、「野球×青春×日本」というテーマを凝縮した楽曲としての圧倒的な知名度がある。
61歳で女性キーをキープする異次元の声
今回最も注目を集めたのが稲葉浩志の声域だ。「タッチ」の原曲はE♭メジャーで女性ボーカリストを想定したキー設定。1964年9月生まれの稲葉は61歳の現在もこのキーを自然に歌い上げる。ultra soulではサビにhiC#という超高音が飛び出す稲葉だが、数十年前の女性曲を違和感なくカバーできるボーカリストは日本のロックシーンでもほとんど存在しない。「鍛え続けた声というのはこういうことか」——そんなコメントがX(旧Twitter)のトレンドに並んだ。
Z世代がシェアした懐かしさのリアル
「タッチ」はYouTubeやTikTokで昭和アニソンとして再発見されていた楽曲のひとつ。Z世代にとっては「どこかで聴いたことがある温かい曲」として認識されていた。そこにWBC2026という現在進行形の興奮が重なることで、懐かしさと熱量が同時に押し寄せる体験が生まれた。TikTokではタッチ稲葉のハッシュタグが急上昇し、若いユーザーが稲葉浩志を検索し始めるという現象まで起きている。
野球ファンと音楽ファンの交差点
B’zのコアファンは30〜50代が中心で、野球を観る習慣を持つ層とも重なりが大きい。一方、岩崎良美の「タッチ」を親から聴かされて育った世代は40〜50代に厚い。この二重の引力が、普段音楽チャートを動かさない層を動員することに成功した。動画のコメント欄では「父親と一緒に見て2人で泣いた」という投稿が多数並んでいた。
聴かずにいられない一曲
稲葉浩志×「タッチ」のカバーは現在、B’zの公式YouTubeチャンネルほかで配信中だ。試合の熱狂を思い出しながら、ぜひ一度耳を傾けてみてほしい。40年という時間を飛び越えてくる、あの声を。


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