八木莉可子が、伝説のファッションデザイナー・森英恵を演じた——それだけでもニュースになる話だが、この次世代女優が見せた演技の幅は、視聴者の予想を大きく超えるものだった。テレビ朝日スペシャルドラマ「森英恵 Butterfly beyond」で、八木莉可子は17歳から39歳まで一人で演じ切った。
パリを目指した少女が、世界を変えるまで
森英恵は1926年生まれ。東京大学を卒業後、独学でファッションの道へ進み、1970年代にパリオートクチュールのカレンダーへ初めて名を刻んだアジア人となった。蝶をモチーフにした繊細なデザインは「マダム・バタフライ」として世界中に知られ、2022年に96歳で生涯を終えるまで第一線で創作を続けた。タイトルの「Butterfly beyond」は彼女の信念——「蝶は必ず飛び立てる」——に由来する。
22歳が17歳から39歳を演じる、という難題
八木莉可子は2002年生まれ。本作の撮影時点でまだ20代だった彼女が、少女の瞳と30代の女の強さを同一人物として表現しなければならなかった。声のトーン、歩き方、視線の重さ——時間軸を体ひとつで引き受けるのは、ベテランでも困難を極める作業だ。共演した中島裕翔(夫・森賢役)は取材で、シーンによって八木莉可子の目が別人のように変わる瞬間があったと語っている。その言葉は演出の誇張ではなく、現場での実感から生まれたものだろう。
キャリアは「準備してきた者」が掴む
2017年のデビュー以来、八木莉可子はCM・映画・連続ドラマと着実に実績を積んできた。主演の機会は突然訪れたわけではなく、脇役として輝き続けた9年間のあとに届いたオファーだった。SNS上では「この子、こんなに演れたの」という驚きの声が相次いだ。ニッチな題材にもかかわらず、Xのトレンドに「八木莉可子」が一時入ったことは、実力が口コミで拡散された証拠だろう。
ファッション×ドラマという稀少な体験
本作のもうひとつの見どころはコスチュームだ。森英恵の実際のデザインを参考に再現された衣裳の数々は、それだけで映像資料としての価値がある。ドラマとしてだけでなく、日本ファッション史のドキュメンタリーとしても楽しめる。
次の八木莉可子を、見逃すな
蝶が飛び立つとき、誰もその準備を見ていない。本作を見ていない人はまず配信でアーカイブを探してほしい。10代から30代への変化を演じ分けるその目力に、きっと新しい「推し」を見つけることになる。


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